『データセットのメリット』
『データセットのメリット』
こんにちは、専務の藤井です。
全国で本格稼働しているECS(Engine Control System)ですが、現在は主に、リビルトエンジンの出荷前動作確認に使用されています。
ここで、このような使用目的の場合、ECSの特徴である「対象エンジンごとに適合されたデータセット」がもたらすメリットについて、簡単にご紹介したいと思います。
まず写真は、燃料噴射圧(レール圧)制御の周波数応答を示した、いわゆる「ボード線図」のイメージ図です。
ここで、水色の線が各エンジン機種の実際の特性で、つまり、実車のECU(Engine Control Unit)で制御した場合の特性です。
これに対し、ECSをリビルトエンジンの出荷前動作確認に使用する場合、お客様にはマゼンダ色のような特性を描くように適合されたデータセットを配布しています。
これから判るように、一般的に実機の特性は、図のように約10dB程度のゲイン余裕をもつような適合がされているのに対し、配布するデータセットでは「あえて(←ここ重要です)5dB程度のゲイン余裕」に抑えています。
これの意味するところは、”ECSでは実機と比較してレール圧がハンチングしやすい。”となるのですが、「あえてそうしている」のには意味があります。
つまり、実機の制御性を上回った適合をECSでおこなってデータセット化・配布した場合、”ECSではハンチングしないのに、実車ではハンチングする”という現象が発生しうるため、エンジンの出荷前検査としては適切ではなくなってしまうからです。
逆に言えば、実機の制御性より少し余裕のない適合とすれば、”ECSで駆動して問題なかったエンジンは、実車でも問題ない”と言え、「より厳しい出荷検査」を達成することができるため、このような選択をしているということです。
とはいえ、あまり余裕を抑えた適合をしてしまうと、健全なエンジンでもハンチングが発生してしまうという、「ドSな出荷検査」になってしまうため、それなりのゲイン余裕をもたせる必要があります。
つまり、上記のような目的に使用する場合の最適な適合(図中グリーンの帯域)、いわゆる「スイートスポット」は非常に狭い領域に限定されており、これを実現するための初期適合は、ハードウェア(適合を実施するマスターエンジン)の素性や環境条件に細心の注意を払って実施します。
また、ネットワークを通して各ECSでのエンジン駆動状態をモニタリングし、そのデータを元に、初期適合から改善すべきポイントがあれば随時データセットを更新しています。
このように、データセットにより「使用目的に合った性能」に自由自在に変化できるというのは、ECSの大きな特長であると考えています。
ちょっとマニアックな用語が多発してしまいましたが、ECSにご興味をおもちの方は、どうぞご相談・お問い合わせください。