株式会社 アイ・アール・エス ~ インジェクタ再生洗浄サービス ~

ガソリン・ディーゼルエンジン用インジェクター再生洗浄サービス

『GW特別篇:第3話 尿素SCRシステム』

2016-05-04

ゴールデンウィーク特別篇:第3話 尿素SCRシステム

 

こちらも昨日紹介したNOx吸蔵触媒同様に、NOx(窒素酸化物)を低減する技術です。尿素SCR(Selective Catalytic Reduction :選択還元触媒)システムは、現在多くの車両に採用されており、AdBlue(R)と呼ばれる尿素水を使用しています。
 
そこで第3話では、登場から10年近く経過し、コモンレールシステム、DPF(Diesel Particulate Filter :ディーゼル微粒子捕集フィルター)と同様にアフターマーケットで扱うことが増えてきた尿素SCRシステムについて、登場の背景やシステムの概要について紹介したいと思います。
 
【SCRシステム登場の背景】
 
NOxを無毒な窒素に変えるSCRの歴史は古く、1950年代には特許が取得され、世界中でさかんに研究開発がおこなわれていました。そして、1970年代には、重工業を主体とした日本のメーカーである株式会社IHIが、定置用ボイラーのNOx浄化装置として世界で初めて実用化に成功しました。定置用NOx浄化装置の例を図1に紹介しています。
 
13094426_706402022835934_4805674509763896125_n
 
定置用としては実用化されてから歴史の長いSCRですが、いざそのシステムを車載するとなると、厳しい使用条件や反応に用いる物質(定置用の場合はアンモニアが多いが、車載の場合は安全性の面から尿素水を用いる)の供給方法等、解決すべき課題が多く実用化するには時間がかかると考えられていました。
 
しかし、この困難に果敢に挑戦し、2004年に世界で初めて尿素SCRシステムを搭載した車両の量産化(図1参照)に成功したのが、UDトラックス株式会社(当時は日産ディーゼル工業株式会社)です
 
当時、最新の排出ガス規制である新長期規制に適合させるため、各トラックメーカーは熾烈な開発競争を繰り広げていました。ディーゼルエンジンでは、排気ガス中のNOxとPM(Particulate Matter :粒子状物質)はトレードオフの関係にあり、NOxの排出量を減らす適合をおこなえばPMが増え、逆にPMの排出量を減らす適合をおこなえばNOxが増える、というジレンマが常にあります。
 
そのため、図2に示すように排出ガス規制に適合させるため、PMとNOxの内、一方を燃焼で減らし、もう一方を排気後処理装置で減らすシステムを採用するメーカーが増えてきました。
 
13091918_706402012835935_4631959148927950642_n
 
このとき、排気後処理装置として技術的に確立されつつあったDPFを用いてPMを低減し、エンジン側では主にEGR(Exhaust Gas Recirculation :排気再循環)を用いてNOxを低減することで、規制値をクリアしようという考えが主流でした。
 
しかし、燃焼でNOxを低減させる適合をした場合、燃費が悪化してしまうデメリットがありました。そのため、UDトラックスでは、燃費の悪化を抑えるため、燃焼でPMの排出を抑え、後処理装置に尿素SCRを用いNOxを低減するシステムを採用しました。
 
UDトラックスは、世界初という技術的な困難さに加え、SCRシステムに使用する尿素水の供給ステーションを全国に整えるという課題も克服し、見事量産にこぎつけました。
 
こういった苦労を経て、新長期規制よりもさらに厳しいポスト新長期規制となった今では、排気後処理としてDPFと尿素SCRを組合わせたシステムがスタンダードになっています
 
【尿素SCRシステムの概要】
 
<尿素SCRシステムとは?>
 
排気ガス中のNOxを無毒な窒素にする装置のこと。そのためにはNOxから酸素を奪う(還元反応と呼ぶ)必要があり、その反応にアンモニアを使用します。ただし、アンモニアには毒性がありそのままの状態で車載するのは危険なため、毒性の心配のない尿素水を車載し、SCRシステム内で尿素水をアンモニアに変えて使用しています。
 
<尿素SCRシステムの構成>
 
図3に示すようにSCR触媒の上流と下流にそれぞれ酸化触媒を配置し、SCR触媒の直前に、尿素水を噴射する噴射装置が配置されます。以下に、それぞれの役割について紹介します。
 
13091964_706402006169269_2144163305851208138_n
 
上流側酸化触媒
排気ガス中にNO(一酸化窒素)とNO2(二酸化窒素)が同じ割合で存在すると、NOxは効率よく浄化されます。ただし、実際の排ガス中にはNOが多く存在するため、SCR触媒上流の酸化触媒にてNOをNO2に変えNO2を増やすことで、NOx浄化率を上げています。
 
尿素噴射装置
SCR触媒に対し必要な量の尿素水を噴射します。噴射された尿素水はアンモニアに変わり、SCR触媒に吸着します。尿素水の噴射に使用されるインジェクターは、主にガソリン用のものです。
 
SCR触媒
SCR触媒には常に一定量のアンモニアを吸着させます。排気ガス中に含まれるNOxは、SCR触媒に吸着したアンモニアと反応し、無毒な窒素になります。
 
下流側酸化触媒
反応に使用されなかったアンモニアは、SCR触媒を通過しそのまま大気中に放出されてしまうため、SCR触媒の下流に酸化触媒を配置し、アンモニアを無毒な窒素に変えます。
 
第3話は以上です。
明日の第4話では、NOx低減装置に頼らないで排出ガス規制をクリアした、マツダのスカイアクティブテクノロジーについて、紹介したいと思います。
 
出典
図1:ボイラー向けNOx後処理装置
三菱日立パワーシステムズ株式会社
脱硝装置「酒田共同火力・酒田1号ボイラ向」
https://www.mhps.com/products/detail/selective_catalytic_reduction_system_a.html
図1:2004年当時のQUON尿素SCRシステム搭載車
http://www.tokyo-motorshow.com/show/2004/public/boothguide/0100_nissan-diesel/index001.html

レベリングインジェクターオンラインショップ

営業日カレンダー

2024年5月
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
2024年6月
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
  • 非営業日
  • 工場非稼働日(設備メンテナンス)
ガソリンインジェクター洗浄オーダーフォーム
ディーゼルインジェクター洗浄オーダーフォーム
バナー
バナー
日本液体微粒化学会

サービス内容動画