燃圧と噴射量と霧化(微粒化) その3
こんばんは、だんひょうです。
「燃圧と噴射量と霧化(微粒化)①」、「燃圧と噴射量と霧化(微粒化)②」と続き、今回で3回目のシリーズになってしまいました。
話しが長くてすいません、、、、。
さて、今日は、
噴霧の微粒化過程と微粒化要因について書いていきたいと思います。
液体はどのような過程を経て微粒化するのでしょうか?
この過程は非常に複雑なメカニズムであり、一言で説明するのは困難です。
ここでは、インジェクターに特化して説明させて頂きます。
インジェクターにおける微粒化過程は、大きく下記二つに分類されます。
1、液膜分裂
大きい液体の塊から、ピントルやスリットにより液膜が形成され、その後小さな液滴へと分裂していきます。 (下図インジェクター参照)
大きい液体の塊から、液柱(または液糸)が形成され、そのまま小さな液滴へと分裂していきます。 現在、こちらの方が多く、1と比較すると微粒化に優れています。 (下図インジェクター参照)
さて、上記過程における微粒化要因とはどのようなものがあるのでしょうか?
・燃料内部の乱れ
・液体と気体(噴射場)の界面における不安定性
・相対速度に基づく不安定性
、、、、、等いろいろなものがあります。
様々な微粒化要因が複雑に液体に作用し、液体が液滴へと分裂します。
「燃圧と噴射量と霧化(微粒化)②」で下記記載しました。
「分裂するには理由が有り、その理由を、微粒化要因といい、微粒化要因を引き起こすためには、エネルギーが必要になります。 そのエネルギーを、微粒化エネルギーといいます。」
燃料インジェクターにおいては、圧力により微粒化エネルギーが増加します。
下記式より、燃圧を上げる(差圧が大きくなる)と、燃料の噴射速度が増加します。
←← 燃圧と噴射量と霧化(微粒化)①参照
(インジェクター噴孔は同じなので、同じ孔から出る噴射速度が増加するということは、燃料の噴射量が増加するということになります。 )
噴射速度が上がるということは、燃料が保有する運動エネルギーが増加します。
この運動エネルギーこそが、微粒化エネルギーなのです。
本シリーズの主目的である、「燃圧を上げると霧化が良くなると言われますが、本当ですか?」の解説が下記となります。
「燃圧を上げる」
→燃料の噴射速度が上昇
→ 運動エネルギー(微粒化エネルギー)の増加
→ 微粒化要因が強く作用する
→ 微粒化促進(霧化が良くなる)
つまり、噴射環境が同じであれば、圧力を上げると霧化が良くなります!
以前も記載しましたが、
現在の燃料噴射系の圧力は、大体下記のようになっています。
ガソリンエンジン
・ポート噴射:2.5~3.0bar
・筒内直接噴射:100~300bar
ディーゼルエンジン
・機械式:~1000bar
・電気式(コモンレール式):1200~2000bar
コモンレール式ディーゼルエンジンの最高圧力は、2000barに達し、噴霧の噴射速度も非常に速くなります。
インジェクターの仕様にもよりますが、噴射初速度は実測で、200m/s~400m/sになり、手を近づけると、簡単に貫通してしまいます。
ディーゼルエンジンは、厳しい排ガス規制に対応するため、微粒化を主目的として燃圧が高圧化されます。
なんとなくだとは思いますが、「燃圧と噴射量と霧化」の関係について、下記のようなことが御理解頂けたのではないかと思います。
・燃圧を上げるとなぜ噴射量が増えるのか?
・燃圧をあげるとなぜ霧化がよくなるのか?
・液体は、なぜ微粒化するのか?
まだまだ本シリーズでは書きたい事が山ほどありますが、別の機会にまた書くことにします。
なかなかうまく伝えられない部分も多々あったかと思いますが、お許し下さい。
今後もテクニカルなテーマも書いていきますので、テーマに御要望がございましたら是非御連絡下さい。 せんむと私で書いていきたいと思います。