第1話 ガソリン用直噴エンジンの概要 ~メリットとデメリットについて~
こんばんは。営業の野本です。
昨日からスタートした年末年始特別編。第1話と2話は、ガソリン用直噴エンジンの話題をお伝えします。
1996年に三菱自動車が世界で初めて量産化に成功して以降、トヨタ自動車や日産自動車など、多くの自動車メーカーが直噴エンジンを市場投入しました。その後、2000年代初頭の一時期、直噴エンジンは市場から姿を消してしまいましたが、今現在は多くの自動車メーカーがラインナップに取り入れており、特に輸入車には直噴エンジンが多く搭載されています。
そこで第1話では、まず直噴エンジンのメリットとデメリットをお伝えします。そして第2話で、そのメリットとデメリットを元に、なぜ直噴エンジンが登場し、その後一時期市場から消え、再度復活したのかについて紹介したいと思います。
それでは、第1話スタートです。
まず、直噴エンジンとは、燃料を直接筒内に噴射するエンジンのことです。この直噴エンジンの主なメリットとデメリットを以下に示します。
【メリット】
1.高圧縮化により理論熱効率を向上させることが可能
理論熱効率は圧縮比に比例し、圧縮比が高いほど効率は高くなります。
今までのポート噴射式のように混合気を吸入する場合、圧縮比を高くすると、点火の前に自己着火してしまいノッキング(異常燃焼)を起こすため、高圧縮化にも限度がありました。
それに対し、図1aで分かるように、直噴エンジンでは空気のみを吸入・圧縮するため、圧縮比を高くしてもノッキングが発生しないため、高圧縮化でき理論熱効率が向上します。
2.燃料の気化熱により、筒内温度を下げノッキングを抑えることが可能
燃料は気化した際に、周囲の熱を奪います。直噴エンジンの場合、図1bで示すように、燃料は筒内に噴射されるため、その熱を奪う作用が、ほぼすべて筒内を冷やすために使われます。
筒内が冷やされることで、圧縮比を上げた場合、筒内温度が上がりすぎることを防ぎ、燃料噴射時にノッキングが起きにくくなります。
3.筒内に直接、燃料噴射するため、燃焼を制御することが可能
図1cに示すように、点火プラグの周辺にのみ着火可能な空燃比の混合気を形成させることで、燃焼室全体で見ると空気過剰な状態で燃焼させる(リーンバーン)など、様々な燃焼をデザインすることが可能になります。
現在では、ディーゼルのコモンレールシステム同様に、多段噴射が可能となり、さらに燃焼を制御できるようになってきています。
次にデメリットです。
【デメリット】
1.高コスト
直噴エンジンの場合、燃料を噴射してから点火までの時間が短く、ポート噴射式のように混合気形成までに十分な余裕がありません。そのため、ポート噴射用インジェクターと比較し、燃圧を約50から100倍と高くすることで霧化を促進させ、素早く混合気を形成させています。
この高圧化に対応するため、燃料噴射システムも高額になってしまいます。直噴インジェクターの例を図2に示しています。
2.排ガス性能の悪化
燃料を噴射してから燃焼するまでの時間が短いため、局所的に燃料が濃い部分ができやすく、ススの発生に繋がります。また、前述のリーンバーンでは、排気ガスが常に空気過剰な状態のため、三元触媒でNOx(窒素酸化物)を低減することができないため、NOxの低減が課題となります。
3.エンジン内部の汚れ
燃焼により発生したカーボンが様々な箇所に堆積し、不調の原因となります。 例えば、弊社では、アルファロメオの直噴エンジンに関し、このカーボンが原因と思われるトラブルを良くお伺いします。吸気ポートの流路が半分程度になってしまうほど、カーボンが堆積する事例もあるそうです。
また、インジェクターのノズル先端部は、筒内に突き出ているために常に燃焼にさらされます。そのため、図3に示すように、ポート噴射式と比べ汚れやすく、噴霧状態の悪化により、エンジン振動の増大や出力低下などの車両不調が現れることがあります。
第1話は以上になります。
第1話では、まず直噴エンジンのメリットとデメリットを紹介しました。
明日の第2話では、こういったメリットやデメリットを踏まえた上で、三菱GDI等の初期の直噴エンジンから、現在の直噴エンジンまでを紹介したいと思います。
明日もお楽しみに!